だいぼさつとうげ 32 べんしんのまき
大菩薩峠 32 弁信の巻

冒頭文

一 「おや、まあ、お前は弁信さんじゃありませんか……」 と、草鞋(わらじ)を取る前に、まず呆気(あっけ)にとられたのは久助です。 「はい、弁信でございますよ。久助さん、お変りもありませんでしたか、お雪ちゃんはどうでございます」 「お雪ちゃんも、無事でいるにはいますがね……」 「なんにしても結構と申さねばなりません、本来ならばあの子は、この白骨へ骨を埋める人でございましたが、それでも御

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 大菩薩峠13
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年6月24日