ベルリンのおちば
伯林の落葉

冒頭文

彼が公園内に一歩をいれた時、彼はまだ正気だった。 伯林にちらほら街路樹の菩提樹の葉が散り初めたのは十日程前だった。三四日前からはそれが実におびただしい速度と量を増して来た。公園は尚更、黄褐色の大渦巻きだった。彼は、始め街をしばらく歩いて居た。こまかい菩提樹の葉が粉のように顔や肩や足元に散りかかった。それはひそかに無性な触覚の気安さから一たび風が吹き出すと、吹雪のように中空に、地上に舞い立

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 世界紀行文学全集 第七巻 ドイツ編
  • 修道社
  • 1959(昭和34)年8月20日