じしんざっかん
地震雑感

冒頭文

一 地震の概念 地震というものの概念は人々によってずいぶん著しくちがっている。理学者以外の世人にとっては、地震現象の心像はすべて自己の感覚を中心として見た展望図(パースペクティヴ)に過ぎない。震動の筋肉感や、耳に聞こゆる破壊的の音響や、眼に見える物体の動揺転落する光景などが最も直接なもので、これには不可抗的な自然の威力に対する本能的な畏怖が結合されている。これに附帯しては、地震の破壊作用

文字遣い

新字新仮名

初出

「大正大震災誌」1924(大正13)年5月

底本

  • 寺田寅彦全集 第六巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年5月6日