かせいのしばい
火星の芝居

冒頭文

『何か面白い事はないか?』 『俺は昨夜(ゆうべ)火星に行って来た』 『そうかえ』 『真個(ほんと)に行って来たよ』 『面白いものでもあったか?』 『芝居を見たんだ』 『そうか。日本なら「冥途(めいど)の飛脚」だが、火星じゃ「天上の飛脚」でも演(や)るんだろう?』 『そんなケチなもんじゃない。第一劇場からして違うよ』 『一里四方もあるのか?』 『莫迦(ばか)な事を言え。先(ま)ず青

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 石川啄木集(下)
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1950(昭和25)年7月15日、1970(昭和45)年6月15日25刷改版