なかざとかいざんの『だいぼさつとうげ』
中里介山の『大菩薩峠』

冒頭文

上 中里介山さんの『大菩薩峠』(普及本の第一巻)を読んでみる。これは最初のところは、奥多摩の地理や生活ぶりが書いてあるので、そこに生れた作者にとっては、何の造作もない、まことに危なげのないところでゆける。しかし例の通り言葉遣いや何かの上には、おかしいところがある。それから武家の生活ということになると、やはりどうもおかしいところが出てくる。これは大衆文芸として、早い方のもののようでありますが、

文字遣い

新字新仮名

初出

「日本及日本人」1932(昭和7)年10月15日号、11月1日号

底本

  • 三田村鳶魚全集 第廿四巻
  • 中央公論社
  • 1976(昭和51)年12月25日