なんとうたん 03 とり
南島譚 03 雞

冒頭文

南洋群島島民のための初等学校を公学校というが、或る島の公学校を参観した時のこと、丁度朝礼で新任の一教師の紹介が行われている所にぶつかった。其(そ)の新しい先生はまだ如何(いか)にも若々しく見えるのだが、既に公学校教育には永年の経験のある人だという。校長の紹介の辞についで其の先生が壇に上り、就任の挨拶をした。 「今日から先生がお前等と勉強することになった。先生はもう長いこと南洋で島民に教えとる

文字遣い

新字新仮名

初出

「南島譚」問題社、1942(昭和17)年11月

底本

  • 中島敦全集2
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1993(平成5)年3月24日