いちりこしゅぎしゃとゆうじんとのたいわ
一利己主義者と友人との対話

冒頭文

B おい、おれは今度また引越しをしたぜ。A そうか。君は来るたんび引越しの披露(ひろう)をして行くね。B それは僕には引越し位の外に何もわざわざ披露するような事件が無いからだ。A 葉書でも済むよ。B しかし今度のは葉書では済まん。A どうしたんだ。何日(いつ)かの話の下宿の娘から縁談でも申込まれて逃げ出したのか。B 莫迦(ばか)なことを言え。女の事なんか近頃もうちっとも僕の目にうつらなくなった。女

文字遣い

新字新仮名

初出

「創作 第一巻第九号」1910(明治43)年11月1日

底本

  • 石川啄木集(下)
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1950(昭和25)年7月15日