じいさんばあさん
じいさんばあさん

冒頭文

文化六年の春が暮れて行く頃であった。麻布竜土町(あざぶりゅうどちょう)の、今歩兵第三聯隊(れんたい)の兵営になっている地所の南隣で、三河国奥殿(みかわのくにおくとの)の領主松平左七郎乗羨(のりのぶ)と云う大名の邸(やしき)の中(うち)に、大工が這入(はい)って小さい明家(あきや)を修復している。近所のものが誰の住まいになるのだと云って聞けば、松平の家中の士(さむらい)で、宮重久右衛門(みやしげきゅ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 阿部一族・舞姫
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1968(昭和43)年4月20日、1985(昭和60)年5月20日36刷改版