とししゅん |
| 杜子春 |
冒頭文
一 或(ある)春の日暮です。 唐(とう)の都洛陽(らくよう)の西の門の下に、ぼんやり空を仰いでいる、一人の若者がありました。 若者は名を杜子春といって、元は金持の息子でしたが、今は財産を費(つか)い尽して、その日の暮しにも困る位、憐(あわれ)な身分になっているのです。 何しろその頃洛陽といえば、天下に並ぶもののない、繁昌(はんじょう)を極(きわ)めた都ですから、往来にはまだしっきりな
文字遣い
新字新仮名
初出
「赤い鳥」1920(大正9)年7月号
底本
- 蜘蛛の糸・杜子春
- 新潮文庫、新潮社
- 1968(昭和43)年11月15日