ある人が、こんなことを言っていました。 先日文壇の大家の某氏にあったとき、談たまたま作品のことに及んだ折り、私はその作家の十五、六年前に問題になった小説のことを話題にして、 「こういう時局に、あの小説をお考え直しになると、あなたの作品中から抹殺したいお気持ちになりませんか」 ときいたところ、その大家は、 「とんでもない。あの作品は私の全作品中どれよりもすぐれた作で、今でもあれを書いたことを