ダス・ゲマイネ |
ダス・ゲマイネ |
冒頭文
一 幻燈 [#ここから5字下げ、本文よりひとまわり大きい太ゴシック体] 当時、私には一日一日が晩年であった。 恋をしたのだ。そんなことは、全くはじめてであった。それより以前には、私の左の横顔だけを見せつけ、私のおとこを売ろうとあせり、相手が一分間でもためらったが最後、たちまち私はきりきり舞いをはじめて、疾風のごとく逃げ失せる。けれども私は、そのころすべてにだらしなくなっていて、ほとん
文字遣い
新字新仮名
初出
「文藝春秋」1935(昭和10)年10月
底本
- 走れメロス
- 新潮文庫、新潮社
- 1967(昭和42)年7月10日、1985(昭和60)年9月15日40刷改版