くすり

冒頭文

一 亮(あか)るい月は日の出前に落ちて、寝静まった街の上に藍甕(あいがめ)のような空が残った。 華老栓(かろうせん)はひょっくり起き上ってマッチを擦り、油じんだ燈盞(とうさん)に火を移した。青白い光は茶館の中の二間(ふたま)に満ちた。 「お父さん、これから行って下さるんだね」 と年寄った女の声がした。そのとき裏の小部屋の中で咳嗽(せき)の声がした。 「うむ」

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 魯迅全集
  • 改造社
  • 1932(昭和7)年11月18日