「ワトソン君、僕は行(ゆ)かなきゃならないんだがね」 ある朝、一緒に食事をしている時にホームズがいった。 「行くってどこへ?」 「ダートムアだ——キングス・パイランドだ」 私は格別おどろきもしなかった。事実、私は、今全イングランドの噂の種になっているこの驚くべき事件に、ホームズが関係しないということをむしろ不思議にさえ思っていたのである。前の日、ホームズは終日眉根をよせた顔を首