しろがねのしっそう
白銀の失踪

冒頭文

「ワトソン君、僕は行(ゆ)かなきゃならないんだがね」 ある朝、一緒に食事をしている時にホームズがいった。 「行くってどこへ?」 「ダートムアだ——キングス・パイランドだ」 私は格別おどろきもしなかった。事実、私は、今全イングランドの噂の種になっているこの驚くべき事件に、ホームズが関係しないということをむしろ不思議にさえ思っていたのである。前の日、ホームズは終日眉根をよせた顔を首

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 世界探偵小説全集 第三卷 シヤーロツク・ホームズの記憶
  • 平凡社
  • 1930(昭和5)年2月5日