むじな

冒頭文

東京の、赤坂への道に紀国坂という坂道がある——これは紀伊の国の坂という意である。何故それが紀伊の国の坂と呼ばれているのか、それは私の知らない事である。この坂の一方の側には昔からの深い極わめて広い濠(ほり)があって、それに添って高い緑の堤が高く立ち、その上が庭地になっている、——道の他の側には皇居の長い宏大な塀が長くつづいている。街灯、人力車の時代以前にあっては、その辺は夜暗くなると非常に寂しかった

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 小泉八雲全集第八卷家庭版
  • 第一書房
  • 1937(昭和12)年1月15日