こうばい
紅梅

冒頭文

私の庭に早咲の紅梅が一本ある。東と南の光を受けて、北を建物にふさがれてゐるためか、十二月の半からぼつぼつ蕾を破つてゐる。色は桃のやうに濃くも無く、白い磁器の上に臙脂(べに)を薄く融かしたやうな明るさと可憐さとを持つた紅である。私は歳末から此の歳端へかけて快晴がつづくので、毎日一度は庭へ下りて、霜解のあとの芝生を踏んで歩き、友人を訪ふやうな心持で落葉した木木を見上げ、最後に此の紅梅の傍へ來て暫く立つ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 定本 與謝野晶子全集 第二十卷 評論感想集七
  • 講談社
  • 1981(昭和56)年4月10日