すみれ
すみれ

冒頭文

昼でも暗いような深い山奥で、音吉じいさんは暮して居りました。三年ばかり前に、おばあさんが亡くなったので、じいさんはたった一人ぼっちでした。じいさんには今年二十になる息子が、一人ありますけれども、遠く離れた町へ働きに出て居りますので、時々手紙の便りがあるくらいなもので、顔を見ることも出来ません。じいさんはほんとうに侘しいその日その日を送って居りました。 こんな人里はなれた山の中ですから、通

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 定本北條民雄全集 上
  • 創元ライブラリ、東京創元社
  • 1996(平成8)年9月20日初版