しんりょくのにわ
新緑の庭

冒頭文

桜 さつぱりした雨上りです。尤(もつと)も花の萼(がく)は赤いなりについてゐますが。 椎 わたしもそろそろ芽をほごしませう。このちよいと鼠がかつた芽をね。 竹 わたしは未だに黄疸(わうだん)ですよ。………… 芭蕉 おつと、この緑のランプの火屋(ほや)を風に吹き折られる所だつた。 梅 何だか寒気がすると思つたら、もう毛虫がたかつてゐるんだよ。 八つ手 痒(かゆ)いなあ、この茶色の産毛(うぶ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「中央公論」1924(大正13)年6月

底本

  • 芥川龍之介全集 第十一巻
  • 岩波書店
  • 1996(平成8)年9月9日発行