みみとめ
耳と目

冒頭文

耳も目も、いずれも二つずつ、われわれの頭の頂上からほぼ同じ距離だけ下がった所に開いている。目のほうは前面に二つ並んでほぼ同じ方向を向いているのに耳のほうは両側にあって、だいたいにおいて反対の方向に向いている。もっとも耳たぶがあるために各方の耳が精確にどちらに向いているかという事はそう簡単に言われないが、しかし、この平凡な事実は考えてみるといろいろなおもしろい意義をもっている。 二つずつあ

文字遣い

新字新仮名

初出

「映画評論」1933(昭和8)年5月1日

底本

  • 寺田寅彦全集 第七巻
  • 岩波書店
  • 1961(昭和36)年4月7日