せいじのはさんしゃ・たなかしょうぞう |
政治の破産者・田中正造 |
冒頭文
若き人々に語る 若き友よ。 「田中正造」——今日突然にこんな名を呼んでも、君には何事かわからない。すこし古い人ならばわかる筈だ。彼等は「鉱毒の田中」「直訴の田中」かうした記憶を朧ろげながら尚(な)ほ何処かに持つて居るだらう。この人の演説、真に獅子吼(ししく)の雄弁を必ず思ひ出すであらう。然し、僕が今この人の名を呼ぶのはこれ等古い人達の苔蒸した記憶を掻き起す為めでは無い。君のやうな、全く名をさへ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「中央公論 昭和八年四月号」1933(昭和8)年4月
底本
- 現代日本文學大系 9 徳冨蘆花・木下尚江集
- 筑摩書房
- 1971(昭和46)年10月5日