こうどくひまつ
鉱毒飛沫

冒頭文

兇徒嘯聚の疑獄起る 二月十三日、利根の河畔に於ける足尾鉱毒被害民と憲兵警官との衝突を報道せんことは、余が此の旅行の主たる目的には非ざりしなり。図(はか)らざりき余が重きを置かざりし此の出来事は、今や却(かへつ)て案外なる大疑獄を惹起(じやくき)せんとは。 直接に中央政府に向て請願せんと企てたる彼等二千五百の鉱毒被害民は、憲兵警官の為めに解散せられたり。而して之と同時に彼等人民は「兇徒嘯聚罪(せ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「毎日新聞」1900(明治33)年2月19日

底本

  • 現代日本文學大系 9 徳冨蘆花・木下尚江集
  • 筑摩書房
  • 1971(昭和46)年10月5日