とうざいなんぼくじょ
東西南北序

冒頭文

鐵幹、歌を作らず。しかも、鐵幹が口を衝(つ)いて發するもの、皆歌を成す。其短歌若干首、之を敲(たた)けば、聲、釣鐘の如し。世人曰く、不吉の聲なりと。鐵幹自ら以て、大聲は俚耳(りじ)に入らずと爲す。其長歌若干首、之を誦するに、壯士劍に舞へば、風、木葉を振ふが如し。世人曰く、不祥の曲なりと。鐵幹自ら以て、世人皆醉へり、吾獨り醒めたりと爲す。鐵幹自ら恃(たの)む所の、何ぞ夫れ堅にして頑なるや。余も亦、破

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「東西南北」1896(明治29)年7月10日

底本

  • 子規全集 第七卷 歌論 選歌
  • 講談社
  • 1975(昭和50)年7月18日