じゆうじん
自由人

冒頭文

一 悲しみにこそ生きむ 楽しさにこそ死なむ この二つの文句が、どうしてこんなにわたしの心を乱すのであろうか。二つが妖しく絡みあい、わたしの胸に忍びこみ、わたしの心を緊めつけて……誘うのである。いずこへ誘うのか。何の誘惑なのか。 その文句を、わたしは思い違いしてるのではあるまいか、そんな気持ちがふっと湧くこともある。だけど、いいえ、わたしの思い違いではない。たしか

文字遣い

新字新仮名

初出

「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)

底本

  • 豊島与志雄著作集 第四巻(小説Ⅳ)
  • 未来社
  • 1965(昭和40)年6月25日