ひぶん ――きんだいでんせつ―― |
碑文 ――近代伝説―― |
冒頭文
ある河のほとりに、崔という豪家がありました。古い大きな家ですが、当主の崔之庚が他から買い取って住んでいるのでした。 崔之庚は六十歳ばかりの矍鑠たる老人で、一代で富をなしたのだといわれています。大地主で、農産物の売買などもしていますが、大体閑散な生活を送っていて、時々旅に出ることがありました。他の土地に第二第三の夫人たちがいるとの噂もありました。また、済南の紅卍字教の母院と青島の后天宮によ
文字遣い
新字新仮名
初出
「文芸春秋」1940(昭和15)年12月
底本
- 豊島与志雄著作集 第四巻(小説Ⅳ)
- 未来社
- 1965(昭和40)年6月25日