あめ

冒頭文

一 子供のときから何かといえば跣足(はだし)になりたがった。冬でも足袋(たび)をはかず、夏はむろん、洗濯(せんたく)などするときは決(きま)っていそいそと下駄をぬいだ。共同水道場の漆喰(しっくい)の上を跣足のままペタペタと踏(ふ)んで、ああええ気持やわ。それが年ごろになっても止まぬので、無口な父親もさすがに冷えるぜエと、たしなめたが、聴かなんだ。 蝸牛(かたつむり)を掌(てのひ

文字遣い

新字新仮名

初出

「海風」1938(昭和13)年11月

底本

  • 日本文学全集72 織田作之助 井上友一郎集
  • 集英社
  • 1975(昭和50)年3月8日