ゆきのシベリア
雪のシベリア

冒頭文

一 内地へ帰還する同年兵達を見送って、停車場(ていしゃば)から帰って来ると、二人は兵舎の寝台に横たわって、久しくものを言わずに溜息(ためいき)をついていた。これからなお一年間辛抱しなければ内地へ帰れないのだ。 二人は、過ぎて来たシベリヤの一年が、如何に退屈で長かったかを思い返した。二年兵になって暫らく衛戍(えいじゅ)病院で勤務して、それからシベリアへ派遣されたのであった。一緒に、敦

文字遣い

新字新仮名

初出

1927(昭和2)年

底本

  • 黒島傳治全集 第一巻
  • 筑摩書房
  • 1970(昭和45)年4月30日