しょみんせいかつ |
庶民生活 |
冒頭文
自動車やトラックやいろいろな事輌が通る広い坂道があった。可なり急な坂で、車の滑りを防ぐためにでこぼこの鋪装がしてあった。自転車の達者な者は、一気に走り降りることも出来たが、昇りはみな徒歩で自転車を押し上げた。 その坂道を昇りきったところ、逆に言えば降り口に、小さな中華ソバ屋があった。その辺一帯は戦災地域で、焼け残りの家と、新たに建てた家と、焼け跡の荒地とが、雑然と入り交っていた。中華ソバ
文字遣い
新字新仮名
初出
「改造」1952(昭和27)年5月
底本
- 豊島与志雄著作集 第五巻(小説Ⅴ・戯曲)
- 未来社
- 1966(昭和41)年11月15日