はなこのちんじゅつ
花子の陳述

冒頭文

それは、たしかに、この花子が致したことでございます。けれど、悪意だとか企らみだとか、そのようなものは少しもありませんでした。ずいぶん辛抱したあげく、しぜんにあのようなことになりましたのです。 父の一周忌がすみましてから、二階の六畳と三畳の二室は、母のお友だちからの頼みで、須賀さん御夫婦にお貸し致し、母とわたくしは、階下の室だけでつましい暮しをしておりました。家は自分たちの所有でしたけれど

文字遣い

新字新仮名

初出

「別冊文芸春秋」1952(昭和27)年2月

底本

  • 豊島与志雄著作集 第五巻(小説Ⅴ・戯曲)
  • 未来社
  • 1966(昭和41)年11月15日