しいんのぎもん
死因の疑問

冒頭文

二月になって、思いがけなく、東京地方に大雪が見舞った。夕方から降り出したのが、夜にはひどい吹雪となり、翌朝は止んでいたが、見渡す限り地上一面に真白。吹雪のこととて、積りかたはさまざまだが、崖下の吹き溜りなどには、深さ一メートルに及ぶところもあった。 雪のあとはたいてい、からりと晴れるのが常だが、その日は薄曇り、翌日も薄曇りで、次の日に漸く晴れ上ったが、その午頃、吹き溜りの雪の中に、若い女

文字遣い

新字新仮名

初出

「小説公園」1951(昭和26)年7月

底本

  • 豊島与志雄著作集 第五巻(小説Ⅴ・戯曲)
  • 未来社
  • 1966(昭和41)年11月15日