かなしいごかい
悲しい誤解

冒頭文

陽が陰るように、胸に憂欝の気が立ち罩める時がある。はっきりした原因があるのではない。ごく些細なことが寄り集まって、雲のように、心の青空を蔽うのである。すると私は生気なく、しみじみと物思う気持ちになる。今朝ほどからそうだった。——昨夜、父の友人の相手をして、ウイスキーと焼酎をしたたか飲んだ。父はこの頃少し酒をひかえているし、友人はひどい飲み助なので、私が呼ばれて相手になったのである。それから、ぐっす

文字遣い

新字新仮名

初出

「女性改造」1949(昭和24)年11月

底本

  • 豊島与志雄著作集 第五巻(小説Ⅴ・戯曲)
  • 未来社
  • 1966(昭和41)年11月15日