おとこぎらい
男ぎらい

冒頭文

男ぎらいと、ひとは私のことを言うけれど、そうときまったわけのものではありません。男のひとは、だいたいいいえ皆が皆、厭らしく穢ならしく、だから私は嫌いです。厭らしくも穢ならしくもなく、ほんとにすっきりしたひとがあったら、私だって好きにならないとも限りません。釈迦牟尼とかマホメットとかのことは知らないが、キリストなら、私は好きです。ミッションの学校にしばらくいたことがあるからそう言うのではありません。

文字遣い

新字新仮名

初出

「苦楽」1949(昭和24)年6月

底本

  • 豊島与志雄著作集 第五巻(小説Ⅴ・戯曲)
  • 未来社
  • 1966(昭和41)年11月15日