ゆめのたまご
夢の卵

冒頭文

一 遠い昔のことですが、インドの奥に小さな王国がありました。その国の王様の城は、高い山のふもとに堅い岩で造られていました。前にはきれいな谷川が流れており、後ろには広い森が茂っていました。谷川の水はいつも冷たく澄(す)みきって、苔(こけ)むした岩の間にさらさらと音を立てていますし、森の奥には何百年となき古い木が立ち並んで、魔物が住んでると言われていて、ほとんど誰も足を踏み入れる者がありませんで

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人公論」1923(大正12)年3月

底本

  • 豊島与志雄童話集
  • 海鳥社
  • 1990(平成2)年11月27日