やまのべっそうのしょうねん
山の別荘の少年

冒頭文

私は一年間、ある山奥の別荘でくらしたことがあります。なかば洋館づくりの立派な別荘でした。番人をしている五十歳ばかりの夫婦者と、その甥(おい)にあたる正夫(まさお)という少年がいるきりでした。私は正夫とすぐに親しくなって、いろいろなことを語りあい、いろいろなことをして遊びました。たくさん思い出があります。そのいくつかをお話しましょう。      一 さくら 別荘の裏手の山つづきのところに

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸」1936(昭和11)年3月

底本

  • 豊島与志雄童話集
  • 海鳥社
  • 1990(平成2)年11月27日