ながひことまるひこ
長彦と丸彦

冒頭文

一 むかし、近江(おうみ)の国、琵琶湖(びわこ)の西のほとりの堅田(かただ)に、ものもちの家がありまして、そこに、ふたりの兄弟がいました。兄はたいへん顔が長いので、堅田の顔長(かおなが)の長彦(ながひこ)といわれていましたし、弟はたいへん顔が丸いので、堅田の顔丸(かおまる)の丸彦(まるひこ)といわれていました。 顔長の長彦は、体がやせて細く、少しも力がありませんでしたが、たいそう知

文字遣い

新字新仮名

初出

「幼年倶楽部」1941(昭和16)年10月ー12月

底本

  • 豊島与志雄童話集
  • 海鳥社
  • 1990(平成2)年11月27日