てんかいちのうま
天下一の馬

冒頭文

一 ある田舎(いなか)の山里に、甚兵衛(じんべえ)という馬方(うまかた)がいました。至(いた)ってのんき者で、お金がある間はぶらぶら遊んでいまして、お金がなくなると働きます。仕事というのは、山から出る材木を、五里ばかり先の町へ運ぶのです。ぷーんと新しい木の香(かお)りがする丸や四角の材木を、丈夫(じょうぶ)な荷馬車(にばしゃ)に積み上げ、首のまわりに鈴をつけた黒馬にひかして、しゃんしゃんぱっ

文字遣い

新字新仮名

初出

「赤い鳥」1924(大正13)年3月

底本

  • 豊島与志雄童話集
  • 海鳥社
  • 1990(平成2)年11月27日