てじなし
手品師

冒頭文

一 昔ペルシャの国に、ハムーチャという手品師(てじなし)がいました。妻も子もない一人者で、村や町をめぐり歩いて、広場に毛布を敷き、その上でいろんな手品を使い、いくらかのお金をもらって、その日その日を暮らしていました。赤と白とのだんだらの服をつけ三角の帽子をかぶって、十二本のナイフを両手で使い分けたり、逆立(さかだ)ちして両足で金の毬(まり)を手玉(てだま)に取ったり、鼻の上に長い棒を立ててそ

文字遣い

新字新仮名

初出

「赤い鳥」1923(大正12)年5月

底本

  • 豊島与志雄童話集
  • 海鳥社
  • 1990(平成2)年11月27日