ぬけがら
脱殻

冒頭文

時は移つて行(ゆ)く。今日の私はもう昨日の私ではない。脱殻(ぬけがら)をとゞめることは成長の喜びである。 その脱殻の一つを、今私はその頃の私に捧げようと思ふ。 いつの頃からともなしに私はさうなつて来た。どうした訳でなのかもわからない。寧(むし)ろわかることを避けて居る。面倒くさがつて居る。私はたゞ、此頃私はかうなんだと思つてみて居る。 「なんて腐つたやうな生活なんだ!」 か

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新潮 十九巻六号」1913(大正2)年12月発行

底本

  • 水野仙子 四篇
  • エディトリアルデザイン研究所
  • 2000(平成12)年11月30日