ジャン・クリストフ 05 だいさんかん せいねん
ジャン・クリストフ 05 第三巻 青年

冒頭文

一 オイレル家 家は沈黙のうちに沈んでいた。父の死去以来すべてが死んでるかと思われた。メルキオルの騒々しい声が消えてしまった今では、朝から晩まで聞こえるものはただ、河の退屈な囁(ささや)きばかりであった。 クリストフは執拗(しつよう)に仕事のうちに没頭していた。幸福になろうとしたことをみずから罰しながら、黙然として憤っていた。哀悼の言葉にもやさしい言葉にも返辞をしないで、傲然(ごう

文字遣い

新字新仮名

初出

JEAN CHRISTOPHE

底本

  • ジャン・クリストフ(一)
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1986(昭和61)年6月16日