ほくしてんびょう |
北支点描 |
冒頭文
青島水族館は全く名ばかりのちっぽけなものであるが、ここの硝子の水槽のなかに、ウマヅラハギというおかしな魚が一匹いる。長さ二十センチあまりのものだが、長めの菱形で、頭が見ようによっては馬の横顔に似ている。こいつが身体も尾鰭もしゃちこばらして、頭を上に尾を下に縦に浮いて、じっと天の一角を眺めている。いつまでもじっとして大真面目でいるので、見ているとこちらが可笑しくなる。北京の中央公園で飼育されてるさま
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)
- 未来社
- 1967(昭和42)年11月10日