たかちほにおもう
高千穂に思う

冒頭文

高千穂峰はよい山である。 霧島神宮駅から、バスで約二十分、霧島神宮前に達する。数軒の簡易な旅館がある。その一軒の店先で、六月上旬の梅雨のはれまの或る日、私はただ一人、登山姿といっても、洋服の上衣をぬぎ、ズボンの裾をまくり、靴を足袋とはきかえ、草鞋をつけ、金剛杖を手にしたに過ぎない。ここから高千穂の頂上まで七キロ半ばかりの道程、普通の足なら六時間で往復されるのだ。 狭くて深い谿谷

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)
  • 未来社
  • 1967(昭和42)年11月10日