いほうじんのいよく |
異邦人の意欲 |
冒頭文
植村諦君の詩集「異邦人」は、近頃読んだもののうちで、感銘深いものの一つだった。 植村君の詩は、詩として上手なものではない。言語の駆使、イメージの喚起など、普通の作詩法的技巧において、苦心の足りない所がないでもない。然し、そういう技巧を超越して、簡明率直に歌っているところに、独特のリズムと清澄統一が獲得されている。殊に嬉しいのは、作者の意欲の力と純潔とが、作詩過程によって少しも乱されていな
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)
- 未来社
- 1967(昭和42)年11月10日