私は友人の画家と一緒に夜の街路を歩いていた。二人とも可なり酔っていた。どういう話の続きか覚えていないが、彼はしきりに球体派という言葉をくり返していた。 「日本画と西洋画との本質的なちがいは、日本画は線で物を把握し、西洋画は面(めん)で物を把握する、というところにある。ところがこの面というものが甚だ厄介で、ともすると平面になってしまう。平面の集まりになったんじゃあ、絵が死んでしまうし、物のヴォ