きをあいするこころ
樹を愛する心

冒頭文

庭の中に、桃の木があった。径五寸ばかりの古木で、植木屋が下枝を払ってしまったので、曲りくねった風雅な一本の幹だけが、空間に肌をさらしていた。だが、その上方、若枝の成長はすばらしかった。強く、盛んに、爆発めいた勢で、枝葉が四方へ伸びた。沢山の実がなった。その精力と重みとは、それを支える古い幹には、堪え難そうに思われた。 危い! と私は思った。 ——少し刈りこんであげようか? 桃

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)
  • 未来社
  • 1967(昭和42)年11月10日