バラックきょじゅうしゃへのことば
バラック居住者への言葉

冒頭文

バラックに住む人々よ、諸君は、バラックの生活によって、云い換えれば、僅かに雨露を凌ぐに足るだけの住居と、飢渇を満すに足るだけの食物と、荒凉たる周囲の灰燼と、殆んど着のみ着のままの自分自身と、其他あらゆる悲惨とによって、初めて人間の生活というものを、本当に知ったに——感じたに違いない。 普通の生活に於ては、諸君の大部分は、生活というものをしみじみと味うことが、可なり少なかったことであろう。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)
  • 未来社
  • 1967(昭和42)年11月10日