れきしにん
轢死人

冒頭文

S君が私に次のような話をしてきかした。 「……そういうわけで、私の友人はその男の後からついて行ったそうです。而もその男というのが友人の知人なんです。常識で考えると一寸妙な話ですが、若々しい情熱に駆られてる頃には、知人の死をただじっと見送るようなこともあるらしいです。その気持ちを想像出来ないこともありませんね。まあ自殺の傍観的共犯者とでも云えるわけですね。で私の友人は、籔の後ろに隠れてその男の

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)
  • 未来社
  • 1967(昭和42)年11月10日