ちよじのおどろき
千代次の驚き

冒頭文

お父さん、御免なさい。あたし、死ぬつもりなんかちっともありませんでした。ただ、びっくりしたんです。ほんとに、心の底まで、びっくりしました。 村尾さんが、まさか……。今になっても、まだ、腑におちません。随分前からのお馴染で、気質(きだて)もよく分ってるつもりでしたのに……。少し変だと思ったのは、つい近頃のことで、それも、実は、あたしの方が変だったのかも知れません。お前さんこの頃どうかしてる

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学界」1934(昭和9)年1月

底本

  • 豊島与志雄著作集 第三巻(小説Ⅲ)
  • 未来社
  • 1966(昭和41)年8月10日