いなかもの
田舎者

冒頭文

「ドラ鈴」がこのマダムのパトロンかどうかということが、四五人の常連の間に問題となっていた時、岸本啓介はそうでないということを——彼にしてみれば立証するつもりで——饒舌ってしまった。第一、みんなが、たとい酔っていたとは云え、さも重大事件かなんぞのように、夢中になって論じあってるのが滑稽だった。——「ドラ鈴」はめったに姿をみせることはなかったが、たまにやって来る時には、いつも酒気を帯びている。そのこと

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 豊島与志雄著作集 第三巻(小説Ⅲ)
  • 未来社
  • 1966(昭和41)年8月10日