にょきゃくいっしゅうかん |
女客一週間 |
冒頭文
一 キミ子は、何の前触れもなしに飛びこんできた。夜の十二時近くだ。それでいて、酒気もなく、変に真面目だ——ふだん、酒をなめたり、はしゃいだり、ふざけたりしてる者が、何かの拍子にふっとそんなことを忘れて、まじまじと眼を見開いてる、そういう調子外れの真面目さだ。そして云うのだ——「よく起きていらしたわね。……お忙しいの?……あたし、今晩泊めて下さらない? いけないかしら……。」だが、そんなことは、彼
文字遣い
新字新仮名
初出
「新潮」1931(昭和6)年11月
底本
- 豊島与志雄著作集 第三巻(小説Ⅲ)
- 未来社
- 1966(昭和41)年8月10日