にとうしゃにのるおとこ
二等車に乗る男

冒頭文

十一月の或る晴れた朝だった。私は大森の友人を訪れるつもりで、家を出ようとしていると、高木がやって来た。 「お出かけですか。」 玄関につっ立ってる私の服装をじろじろ眺めながら、高木は格子戸の外に立止った。 「ああ。……だが一寸ならいいから、上ってゆかない。」 「ええ……でも……。」 「実は約束しているので、余りゆっくりはしておれないが、暫くならいいから上り給え。」 「どちらへ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 豊島与志雄著作集 第二巻(小説Ⅱ)
  • 未来社
  • 1965(昭和40)年12月15日