こうでん
香奠

冒頭文

母上 今日は日曜日です。日曜日にふさわしい好天気です。家の者はみな、妻と子供達と女中と一同で、郊外に遊びに出かけて、私一人留守をしています。で私は、今日一日日向の縁側に寝転んで、あなたにお話をしたいと思います。丁度今私の前には、猫が背をまるくうずくまって、うつらうつらとしています。そういう風に——と云っては失礼ですが、まあそういう風にあなたが私の前にいられるものとして、ゆっくりお話をした

文字遣い

新字新仮名

初出

「時流」1925(大正14)年3月

底本

  • 豊島与志雄著作集 第二巻(小説Ⅱ)
  • 未来社
  • 1965(昭和40)年12月15日