おじ |
叔父 |
冒頭文
中野さんには、喜代子という美しい姪があった。中野さんの末の妹の嫁入った武井某の娘だった。 中野さんと喜代子の母とは、母親が違うせいもあったし、年齢も可なり違っていたし、余り仲がよくなかった。その上、中野さんは富有で羽振のいい方だったし、武井の方は零落した貧しい生活をしていたので、両家の交誼はごく疎遠なものだった。それでもやはり、中野さんにとっては、喜代子が美しい姪たるを妨げなかった。
文字遣い
新字新仮名
初出
「改造」1925(大正14)年2月
底本
- 豊島与志雄著作集 第二巻(小説Ⅱ)
- 未来社
- 1965(昭和40)年12月15日